岸田文雄氏が次期総理になれない理由
広島県の選挙事情
2012年2月2日、自民党・公明党の選挙対策委員長が会談しました。懸案となっていた、次期衆院広島3区の候補者を公明党の斉藤鉄夫副代表へ一本化するというものです。
衆院広島3区の現職(2021年2月時点)は、公職選挙法違反事件で自民党を離党した河井克行被告。自民党広島県連(会長 岸田文雄)は、公明党候補の擁立に対して反発しました。
衆院広島3区に公明党の候補者擁立決定は、岸田文雄氏の総理総裁への道が限りなくなくなったことを意味します。連立与党の公明党が、岸田氏に対して配慮する必要はないとみている。隣県の自民党山口県連(会長 岸信夫)に対して、同じ言動することはあり得ません。
選挙区事情と今後の動きをみていきます。
2017年総選挙
広島県は保守王国で、宏池会(岸田派)の牙城となっていることが分かります。
安芸門徒(あきもんと)の存在
安芸門徒とは、安芸国(広島県西部地域)の浄土真宗本願寺派の門徒のことです。浄土真宗本願寺派は全国に約800万人おり、仏教宗教法人の中で最多となっています。(創価学会は公称500万人)
古くは鎌倉時代に安芸国・備後(現在の広島県)に広まり、毛利元就など戦国大名の庇護のもと、大きな勢力となりました。
特に安芸国(衆院広島3区含む)には、多くの浄土真宗門徒が存在しています。
創価学会の以前の布教活動は活発なものであり、他の宗教との度々対立していました。浄土真宗も例外ではありません。
創価学会の会員の高齢化などの影響か、近年の選挙結果では公明党の得票減少が著しくなっています。また布教活動も以前ほどは聞かれなくなってきており、他の宗教の嫌悪感も薄れつつはあるのではないかと思われます。
他の地域よりも宗教色の強い地域に、あえて公明党がくさびを打ってきたことに特別の意味があるのです。
今年行われる衆院広島3区において公明党が議席を獲得した場合、今後簡単に手放すことはないと思われます。
宏池会の今後
岸田文雄氏は、2012年第9代の宏池会会長に就任しました。これまでの間には清和政策研究会(細田派)は安倍政権ということもあり、96人へと膨張しました。宏池会から枝分かれした志公会(麻生派)は、宏池会を抜いて第二派閥へとなりました。宏池会の影響力は薄くなるばかりです。
宏池会第二代会長であった前尾繁三郎氏は、俗にいう大平クーデターによって会長の座を降りました。時に佐藤総理総裁に対抗して、総裁選へ立候補をとりやめたということが巷間言われていた理由です。
当時の前尾氏の地元である京都府では、革新系の蜷川虎三氏が知事7選をしていました。前尾氏自身も選挙責任者である幹事長として、また地元選出の大物代議士として選挙を取り仕切っていましたが敗れ去りました。このことが間接的ではありますが、前尾氏の政治生命に大きく影響を落としたことは想像に難くありません。
自身の地元を取り仕切れない人物が、国政を取り仕切れるのかが問われているのです。
次期宏池会会長はこの人だ
現職である二階派の河村建夫氏(78歳)に対抗して、参議院選挙(山口選挙区)である岸田派の林芳正(60歳)が立候補するのではないかということです。林氏は立候補の明言こそしていませんが、行動は立候補に向けて動いているようです。
林氏は参議院議員当選5回。農水大臣や文部科学大臣などを歴任して、将来が期待される人物です。総理総裁を目指すならは、衆議院議員しか総理になれないため、鞍替えするしかありません。参議院議員(山口選挙区)から衆院山口2区へ鞍替えした、岸信夫氏のことも勿論頭にあることでしょう。
山口3区の状況をみてみましょう。
山口3区(有権者約26万人)
阿武郡(有権者3千人)
山口3区において宇部市の割合が5割を超える、大票田となっていることが分かります。
カギとなるのが東証1部上場企業であり、地元ダントツ企業である宇部興産の動向です。関連企業で従業員1万人であり、取引先を含めると膨大な人員となります。
林氏の母方の祖父は、宇部興産の創立者であり初代社長を務めた俵田明氏です。また現在社長を務める泉原氏とは、下関西高校・東京大学での同級生という間柄です。
衆院山口3区へ鞍替えして勝利することが、宏池会会長→総理総裁へとつながっていきます。そのすべてが林芳正氏の衆議院への鞍替えという決断一つにかかっています。その決断が日本の政治を動かすことになるでしょう。